あだたらコラム

 ふらっとよりみちインタビュー #1 『岳温泉 お宿 花かんざし』

岳温泉観光協会では「もっとたくさんの人に福島を知ってもらいたい」との願いから、
安達太良山周辺エリアにて活躍される方々の「福島や地元に対する思い」、
またなかなか聞くことのない「震災からの復興」というテーマで5人の方にインタビューをさせていただきました。

「ふらっとよりみちインタビュー」と題して今回から5回にわたって、お届けいたします。

第1回目は岳温泉にて代々続く旅館「お宿 花かんざし」の7代目女将の二瓶明子さんです。

 

温泉と人情のある岳温泉は、ぬくもりある“縁”で結ばれている。

岳温泉 お宿 花かんざし 7代目女将 二瓶明子さん

お宿の正面玄関にて

 

明治創業の老舗旅館は、岳温泉の移り変わりを見る

当館の創業は明治20から30年頃、およそ120、30年以上前と聞いています。もともとは「いずみや旅館」という名でしたが、この辺りのダム開発やスキー場開発の作業員の方々が寝泊まりする下宿のような宿だったようです。日々、作業員さんたちの食事や世話をしていて、時には安達太良山の現場まで昼食のカレーを運んだと、祖母から聞いています。

今の「花かんざし」という名で旅館業を営むようになったのは、平成元年からですから30年というところですね。

当館では、ご年配の常連様や小さなお子様連れのご家族、女性のお客様など、県内外から多くの方にご利用いただいております。外国人のお客様もお見えになり、時代とともに岳温泉をご利用いただくお客様も移り変わっていますね。

「お宿 花かんざし」館内 露天風呂

 

ありのままを伝える難しさと、大切さを感じる

2011年3月11日に起こった東日本大震災(以降:震災)の影響は大きかったですね。地震もさることながら風評被害は私たちの想像を越えていました。放射能という見えない不安があり客足は減る一方。常連のお客様は変わらず足を運んでくださいましたが、それ以外のお客様はまったく来なくなりました。

震災前は小学生や中学生の修学旅行、スキー旅行、いわゆる団体の利用がありましたが、それもゼロに。岳温泉全体でこれまでの賑わいが一瞬で無くなってしまうのは、経営的なこと以上に精神的に痛手でした。その影響で宿を閉めてしまうところもあり、街もすっかり元気が無くなりました。

このままではますます客足は遠のくばかり。なんとかしようと思いついたのが、「岳温泉は安全」ということを、ホームページやSNSを使って発信していくことでした。私たちも放射能や線量の知識がなかったので、お客様に正しい情報を伝えるために、たくさんのことを調べました。

しかし放射線量の値だけを発信しても説得力に欠けるところがあります。とくに当館のように地元の食材でお食事を出している宿ならなおさら。そこで出荷前の食材が放射能検査の過程を経て、小売店等に並ぶまでを段階を踏んで当館のホームページ上で紹介することにしました。私たちとしては「福島の食材は、他県では行っていない世界一厳しい基準の検査をクリアしています。だから安全です」ということを、隠さずにありのままを皆さんに知ってもらうことがとても大事でした。

こうした情報発信をしていくなかで、福島の現状を知らない方々からさまざまなお声をいただきました。そのおかげではありませんが、改めて福島で生活する私たちが“正しい福島の現状”を伝えていく必要性を感じました。

県外の皆さんが福島を訪れて現状や安全面・安心感を家族や友人などに伝えると、どんどん正しい情報が伝わります。一方的に情報発信するより口コミのほうが信頼性も高いし、家族や知人の情報であればなおさら。だからそれはその時できた最良の策だと思っています。

 

福島の”正しい現状”を伝えることが大切と語る

 

“古きよき”はそのままに。旅館の新たな歴史を紡ぐ

震災から7年以上経ち、現在では震災前より客足は伸び、特にここ1、2年は外国人の個人観光客が増えました。シンガポールやアメリカ、カナダ、イスラエルなど、いろいろな国からいらっしゃいます。

私も好奇心から「どうして来たの?」と訊ねてしまう(笑)。すると「大都市の観光の間に、日本の『田舎』を見たかった。それから自分の目で福島を見て、安全な場所だと感じて、家族や友人に伝えたかった」と口々におっしゃる。それがとても嬉しい。

日本の田舎なんて、他にもあるなかで福島を選んで、わざわざ足を運んでくれる外国のお客様がいることに勇気づけられました。せっかく来てくれるのですから“ありのままの福島”を見て感じてほしいです。

外国人のお客様が増えたことは、当館の新しい歴史になりサービスやハード面で変わらないといけないとところだと感じています。しかし130年の歴史で培ってきたもの、受け継いできたものを大切に、さらに磨きをかけていきたいと思います。古き良きものは残しつつ、時流に必要なものを取り入れていくことは必要なことです。

レトロな雰囲気の館内

 

一度離れた故郷も、人の温かさで居心地のいい場所になる

大学進学のために、地元を離れ、そのまま都内のホテルに勤務しました。働いていた時は「このまま地元には戻らないだろうな」と思っていましたが、震災がきっかけで『花かんざし』に戻ってきました。はじめは長い間地元を離れていたこともあって、すこし居心地が悪かったですが、働いているうちにいろいろな方々が私のことを温かく見守って、支えてくれていることに気づきました。年上世代や自分と同じ世代の方々の温かさに触れることで、この岳温泉が大好きになりました。

いつまでも暮らしていきたい。そう思えるこの街が私の誇りですね。

 

『お宿 花かんざし』
公式ホームページ:http://www.hana-kanzashi.com/

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